「クリエイターとして食べていく!」その方法とは?! SmartNews Contents Creators Meetup vol.4開催レポート
こんにちは。スマートニュースの紫原明子です。今日は、去る2月18日にスマートニュースにて開催したイベント、SmartNews Contents Creators Meetup vol.4の模様をレポートします。
SmartNews Contents Creators Meetupとは?
このイベントは、「コンテンツの創り手を尊重する」をモットーに掲げるスマートニュースが、クリエイターの皆さんの活動を幅広くサポートする目的で定期開催しています。
イベントは2部構成となっていて、前半のトークセッションでは、コンテンツ制作にまつわる本質的なテーマをもとに、そのジャンルの第一線で活躍する様々なゲストにお話を伺います。また後半の懇親会では、美味しいお食事ととともに、ゲスト、参加者一体となった、立食形式での交流を行います。
<過去のイベントレポート>
• 「コンテンツの作り手を尊重する」
SmartNews Content Creators Meetup vol.1レポート
• プラットフォームサービスの「中の人」が熱く語った!
SmartNews Content Creators Meetup vol.2 レポート
• 「編集する〜情報を編むチカラ〜」
SmartNews Contents Creators Meetup vol.3レポート
今回のテーマは「クリエイターとして食べていく!」
4回目となる今回は、「クリエイターとして食べていく!」をメインテーマに掲げ、トークセッションを実施しました。
Webの普及に伴い、クリエイターにとっての創作、発表の機会はぐっと身近なものとなりました。一方でここ数年、Webメディアのマネタイズの難しさや、フリーライターの原稿料の低さなど、コンテンツ制作に付随するお金の課題も浮き彫りとなってきました。
そこで今回は、クリエイターに新たな活動の場を提供するとともに、クリエイターが収入を得るための新しい仕組みを考えた、以下の3名の方をゲストにお迎えしました。今後、クリエイターとして食べていくためには、何を心がけていけば良いのでしょうか。お話を伺いました。
<ゲスト>
稲着 達也(いなぎ たつや)
シナプス株式会社編集長
早稲田大学政治経済学部出身、シナプス株式会社編集長。
Synapseリリース後、兼務でドワンゴにて新規事業開発、統合サービスデザインに従事し、2015年シナプスに本格復帰。ファッションショーイベントや討論イベントのプロデュース、ストリーミング番組企画、Webキャンペーンや書籍出版等、媒体問わず様々なコンテンツの企画・編集に携わり、現職。Twitter:@t_inagi
加藤 貞顕 (かとう さだあき)
株式会社ピースオブケイク 代表取締役CEO
1973年新潟県生まれ。大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。アスキー、ダイヤモンド社に編集者として勤務。『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』など話題作を多数手がける。2011年12月に株式会社ピースオブケイクを設立。2013年9月、コンテンツ配信サイトcakes(ケイクス)を立ち上げ。2014年、クリエイターとユーザーをつなぐウェブサービス・note(ノート)をリリース。
佐藤 詳悟(さとう しょうご)
QREATOR AGENT代表取締役社長
1983年生まれ。大学卒業後、吉本興業に入社。ナインティナインやロンドンブーツ1号2号などのマネージャーを歴任。ほかに、千原ジュニアのライブやキングコング西野亮廣とのウェブメディア開発などに関わる。2015年、QREATOR AGENTを創業、スマホ向け動画サービスのコンテンツの企画制作にも携わる。
モデレーターはスマートニュース株式会社コミュニケーションディ
トークセッション開始
冒頭では、ゲストの方が携わる各サービスの概要について、簡単にご説明いただきました。
オンライン・サロンプラットフォーム「Synapse」とは?
稲着さん:Synapseが扱う「オンラインサロン」というのはWeb上でテキスト・動画・音源等の様々なコンテンツを配信できるのはもちろんのこと、そういったコンテンツを起点にしたコミュニケーションやリアルイベントを絡めて、ファンコミュニティのような形に展開していくプラットフォームのことです。
松浦:個人で視聴するだけのサービスとは違うんですね?
稲着さん:コンテンツ消費の原点は「体験」であり、そこから生まれる「熱狂」。そういった価値をインターネット上に再現していくことを目標にしているんです。
「note」とは?
加藤さん:noteはクリエイターが文章や画像、音源、動画をWeb上で簡単に配信できるプラットフォームです。クリエイターの本拠地として使ってほしいと思っています。
松浦:従来のブログやYou Tubeとは何が違うんですか?」
加藤さん:これまでのブログなどと特に異なるのは、コミュニティが作れる、販売ができるという2点です。Webの普及によって、コンテンツ制作に携わる人が増えた一方、これまではクリエイターがお金を稼ぐ手段がありませんでした。
松浦:なるほど。
加藤さん:プロとアマの垣根がどんどんなくなりつつある中で、クリエイターがおもしろいものを作り続けるためには、お金を稼ぐ仕組みを確保する必要があると考えています。
「Qreator Agent」とは?
佐藤さん:Qreator Agent(以下QA)は、クリエイターの営業代理店です。一口にクリエイターといってもさまざまですが、僕らは、経営者や、コントのネタを作るような人のことも「クリエイター」と定義し、彼らがより広く世間に知られることをミッションとしています。
松浦:どんなクリエイターの方がいるんですか?
佐藤さん:現在は女子高生起業家の椎木里佳さんや、研究者の落合陽一さんら、160名のクリエイターが登録しています。テレビ局への営業をかけるだけでなく、Webでの露出を高める、公式サイトに、テレビ番組の企画会議に取り上げられやすい形で、登録されているクリエイターのプロフィールを掲示するなど、様々なアプローチを行っています。こうして、所属するクリエイターの方からマネジメントフィーをいただいています。また、QAとは別にスマホ向けLIVE動画に特化した制作会社も企画でお手伝いしています。
トークセッションは、あらかじめご用意した6つの質問にお答えいただきながら進行します。各回答には、一言ずつキーワードも提示していただきました。
Q1 クリエイターが「稼ぐ」ために、どんな工夫をされていますか?
稲着さん「アーキテクチャの設計」
決済機能やユーザー管理機能を充実させることも重要ですが、特に気をつけていることは、コンテンツの価格下落圧力を作らないことです。
一般的に、デジタルコンテンツは安さを売りにした釣り糸に使われがちです。だいたい電子書籍も配信音楽も、パッケージ型の本やCDより安いですよね。その点、Synapseでは、コンテンツにコミュニティを紐付けることで高単価化を目指すとともに、Synapse自身がコンテンツ販売収益に依存することで、クリエイターにとって価格の下落圧力とならないための構造ができています。サロンオーナーがより良いコンテンツ創作に没頭できる環境構築が重要だと考えています。
加藤さん「コミュニティ」
noteでは、フォロー機能を使って、ユーザーがファンのコミュニティを作ることができます。この点が収益を上げる上で重要だと感じています。というのも、ビジネスをする上で欠かせないのは、売る場所にお客さんがいることだからです。数年前、あらゆるサイトを有料化できるWebサービスがありました。一見画期的なように見えて、これは砂漠の中で物を売るようなものだったので、お客さんが集まらずうまくいきませんでした。この点、電子書籍にも同様の課題があると感じています。せっかくWebにあるのにコミュニティがつくれないし、かつコンテンツが閉じてしまっている。オープンでインタラクティブでなければ、マーケティングが非常に難しいんです。
佐藤さん「出会いと種まき」
既存のタレント事務所では、各タレントのマネージャーが、番組プロデューサーに個別に営業をかけていましたが、これは双方にとって非効率な作業でした。そこでQAではWebに、所属クリエイターの一覧を掲示し、ローコストで、一括して同じ情報を届ける仕組みをつくりました。このような工夫でクリエイターとテレビ番組制作者との「出会い」の機会を作っています。さらに、所属するクリエイターと、既に知名度がある芸人さんなどの対談をWebで企画、制作するなどし、話題を作る。いわゆる「種まき」も行います。
Q2 既に知名度のある人、インフルエンサーしかクリエイターとして稼げないのでしょうか?
稲着さん「収益はスタート時の100倍」
一つ例をあげるならば、元々あまり知名度がない状態でサロンを始めた方でも、現在一月あたりの収益が当初の100倍になっているという例もあります。基本的にSynapseというのは「知名度 × コンテンツ力」を貨幣価値に変換する装置。この公式で言うならば、知名度も大切ですが、コンテンツ力があることの方がより重要です。むしろコンテンツ力さえあれば、知名度をあげるお手伝いもできる。そういった方には他メディアへの紹介や公開イベントのプロデュース、書籍化提案等を通じて全力でサポートします。
加藤さん「いいえ」
既に知名度のある人しか稼げないのかという問いには、「いいえ」です。
特に今年に入って、noteでは「こんなに売れました!」とたくさんの方が声をあげてくださるようになりました。ただ、必ずしも最初から有名な方ばかりが収益をあげているかというと、そうではありません。
Webの世界はセグメント化された世界です。広く一般に知られているわけではないけれど、一部の界隈ではとても知られている人がいます。そういう人が、noteでかなり売り上げをあげている例もあります。マスとニッチが両立できるのがWebの良さだと思います。
佐藤さん「はい(だから知名度をつける)」
本当に面白い人、才能がある人は、ニッチやサブカルにいかずに、マスにいくべきだと思っています。その方が、より多くの人に楽しさを届けられるからです。この目的において知名度は重要です。クリエイターの知名度を高めるサポートをするのがQAの仕事です。
Q3 クリエイターの「育成」について、どんな取り組みをされていますか?
稲着さん「編集機能の提供」
例えばユーザーの行動データを追うことで盛り上がるコンテンツをあぶり出すことも出来ますし、そういった情報や他サロンでの成功事例の展開を通じて、コンテンツづくりのサポートをしています。また、オンラインサロンはコンテンツの生成装置でもあります。コミュニティに投稿される「問い」もコンテンツの一つですし、そこからまた新たなコンテンツが生まれていく。そういったコミュニケーションを軸にしたコンテンツ生成方法を提供するのもデジタル時代の編集者の重要な役割です。
加藤さん「コンテストの開催」
noteでは、新しい才能を発掘するためのコンテストを開催しています。ピースオブケイクで運営しているcakesという媒体で連載できたり、いっしょにコンテストを開催しているコルク(作家エージェント)と仕事ができたりします。昨年、cakesと開催したコンテストでは、2800件を越える応募がありました。ちなみにそのときの優勝者は「フェイスブックポリス」で一躍脚光を浴びた、漫画家のかっぴーさんです。彼のように才能がある描き手は、Webに自分で作品を発表するようになってきているので、コンテストをやることで新しい才能を発掘することができます。また今後は、企業とコラボしたコンテストの実施も考えています。
佐藤さん「幼児教育」
実は今、東京学芸大学と産学連携して、面白い人の分析を進めています。ゆくゆくは、クリエイター育成を目的とした、子供のための学校を作ろうと思っています。というのも、現在QAに登録しているクリエイターの多くが、幼少期に特殊な体験をしているんです。結局、才能は大人になってからでは変化しないんじゃないかというのが僕の考えで、本当に才能あるクリエイター育成のためには、幼児期のアプローチが必要だと思います。
Q4 クリエイターのファン作りのために、どんな取り組みをされていますか?
稲着さん「場の編集」
クリエイターとファンの幸せな環境を維持するために「場の編集」という考え方を持っています。コミュニティというのは言う程簡単なモノではなく……鍵となるのは、コミュニティの濃度や多様性をいかにコントロールするかという点です。コミュニティが賑わうと、次第にアクティブな人が常連化します。偏った人たちが、偏ったコンテンツに「いいね」をするようになると、他のトピックに興味のあるユーザーを排斥してしまいます。なので、ただアクティブに、熱くすれば良いというものでもありません。コントロール方法は大きくわけて4つ。
1 参加者の絶対数を莫大に増やす
2 個々のコミュニケーションをとらせない
3 コミュニケーションを取れる人をランダム化・匿名化する
4 少数かつ濃度の高いコミュニティを乱立させる(分科会)
サービスとしてグロースさせるという意味ではもちろん1もそうなのですが、Synapseでは今サロン内に「分科会」というものを設けて4にも挑戦しています。また、ここでは喋りきれませんがあえてコミュニケーションを取らせない仕組みや匿名化もときには重要になってくると考えています。
加藤さん「編集」
noteに限らずネットはみんなそうですが、自分でものをつくるだけでなく、編集やプロデュースする力のあるクリエイターが輝きやすい場所です。今後の予定としては、「コラボレーションマガジン機能」を実装予定です。これは一つのマガジンを、チームを組んで作ることができる機能です。これにより、共同編集が可能となるので、たとえば編集者と作家が組んでコンテンツをつくっていくことが可能になります。コンテンツ制作において編集力は極めて重要です。今後、メディアが生き残る鍵はテクノロジーと編集だと考えています。
佐藤さん「知名度を増やす」
そもそも、人に知られないとファンはできません。だから、まずは知名度を増やすことが大事です。最近、若い人の多くはテレビを観なくなったというけれど、そうは言ってもやっぱり観ているんです。そうでなければ、テレビで流れたものをWebニュース化したコンテンツを見ています。もちろんスマホでも動画がようやく見られ始め、テキスト記事はほぼWebで見ているみたいです。おそらく、今後、エンターテインメントのコンテンツはテレビとスマホのハイブリッドでユーザーに多く届けられると思います。テレビとスマホを制することで、マスになると思います。だからクリエイターも、稼ぐためにはマスに出ていく必要があると思います。
Q5 これからのクリエイターに求められる表現方法とは?
稲着さん「メディアを越境する」
昨今、コンテンツ消費の主流は、本やCDといったパッケージ単位で完結するものから、広く複数のコンテンツに跨る体験型の消費へと移行しています。なので、クリエイターは有料・無料、マス・ネット問わず越境し、それらが繋がることで一連の体験となるようなサービス体系を設計していく必要があります。例えば、Webを主軸に活動している人も、著作があれば箔がつきますし、テレビに出れば知名度が圧倒的に増します。Webとマスは協業できるものです。クリエイターは何か一つに特化せず、様々なメディアで活躍するべきだと思います。
加藤さん「コミュ力」
Webというインタラクティブな場で、ファンとどのようにコミュニケーションをとっていくのかが重要です。全てを自分で行う場合にも、スタッフに任せる場合にも、広義の意味でのコミュニケーション力が必要となりますよね。
佐藤さん「自分の強みを理解する」
そもそもその人が何をしたいのか、その人は何なのか、そのサービスは何なのか、今はあらゆる本質が「バレる」時代です。だからこそ、ブレない人であることが何より重要です。たとえ周りから見れば勘違いだったとしても、自分はこうだと決めて、思い込みましょう。表現媒体や手法が多様化しているからこそ、自分の芯を持っていなければ主張がぶれてしまいます。
Q6 クリエイターが今後「稼いでいく」ために大切な心がけとは?
稲着さん「価格感」
コンテンツの価格というのは一筋縄では決められないもの。例えば、ももクロのライブのチケットよりAKBの方が安かったからといってファンが鞍替えするかというとそんなことはありません。また、現在YouTubeは音楽を「無料」のもののように思わせていますが、1曲は10万だと思わせるプレイヤーがいてもいいんです。とかくWebの世界ではクリエイターは買い叩かれがち。価格を編集するという意識を持ち、高付加価値なコンテンツ消費体験を設計していくことが重要です。
加藤さん「何を売るか」
かつては、CDや本といった、パッケージ化されたコンテンツしか売れませんでした。ところが、noteのような仕組みを使うと、コミュニケーションも売ることができるようになります。テクノロジーによって可能になること、自分ができること、お客さんが望んでいるもの、の3つの交点をうまく見つけることが大切です。
佐藤さん「お金を好きになるか、お金が好きな人を雇う」
クリエイターの中には、頼まれてもなかなか請求書を送らない人や、仕事を安請け合いしてしまう人が少なくありません。お金を稼ぐことをゴールに据えているのなら、お金を好きになるほかありません。ただし、クリエイター自身が価格交渉をするのは、日本では結構難しいことです。そういうときには、QAのように、お金が好きな人を雇うといいと思います。
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QA佐藤さんより、テレビ番組のプロデューサーがキャスティングを考える際、「近年特に、ネットでの知名度を重視し始めていると思う」というお話がありました。Webとテレビ、あるいはWebと紙媒体は、ともすれば対立軸のように語られることもありますが、実は両者の距離は、これまでになく近づいているようにも思えます。だからこそ、クリエイターが稼ぐための手段もまた、以前にも増して多様化しています。今後は「何を売るか」にとどまらず、何を、誰に、いくらで、どうやって売るのか。クリエイター自身が独自に、ビジネスの仕組みから考えていくこと求められているのかもしれません。
ゲストのみなさま、ご登壇ありがとうございました。
良質な食は良質なコンテンツ
さて、SmartNews Contents Creators Meetupでは、「良質な食は良質なコンテツである」とし、素材にも、見た目にもこだわった特別なお食事をご用意しています。ケータリングを担当してくださったのは、前回と同じく、料理人の安田花織さんです。会場を彩った季節の食材は、千葉のさいのね畑さん、南伊豆の猟師黒田さん、岩手の漁港で魚介の買い付け卸をしているうおたくさんから仕入れたものです。
地球のご当地キャラクター、地球くんバーガーもお目見え。バンズは天然酵母を使い、手ごねで一つ一つ丸めていただいたそうです。
<お品書き>
・三陸ネリツブと金美人参、赤カブのスパイス漬けのピンチョス
・三陸牡蠣となべちゃんネギのカナッペ
・アンデスレッド(ジャガイモ)と赤軸ほうれん草のオムレツ ビーツのソース
・南伊豆鹿のローストと大根(紫師舞、桃ほっぺ)ヨーグルトソース
・三陸鱈カツ自家製マスタードサンド
ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました!
以上、SmartNews Contents Creators Meetup vol.4の模様をお届けしました。
有志の方による当日のツイートまとめや、参加してくださった方によるイベントレポートは、以下よりご覧ください。
「クリエイターとして食べていく!」SmartNews Contents Creators Meetup vol.4 #スマニュー
SmartNews Contents Creator Meetup Vol4に行ってきました #スマニュー(Ogatism)
※次回のイベントは2016年4月に開催予定です。詳細が決定し次第、Peatixおよびスマートニュース公式Twitterアカウント@SmatrNewsInc_jpより告知いたします。どうぞお楽しみに!