スマホ向け動画って何だ?! 〜SmartNews Contents Creators Meetup vol.5イベントレポートPart1〜
みなさん、こんにちは。スマートニュースの紫原です。
今日は、去る6月24日、スマートニュースで開催したイベント、SmartNews Contents Creators Meetup vol.5の模様をレポートします。
スマートニュースがクリエイターのみなさんの活動をサポートするために定期開催している本イベント、5回目となる今回のテーマはズバリ「動画」です。
TBSとC CHANNELの業務提携開始や、サイバーエージェントとテレビ朝日の新動画サービスAbemaTVの満を持してのスタートなど、今年に入って、スマホ向け動画配信事業に関する大きな話題が相次いでいます。
また、iPhoneの特性を活かしたアイドルグループ”lyrical School”の縦型ミュージックビデオは、公開と同時に大きな話題となりました。
スマホ向け動画コンテンツが今、大きな注目を集めています。
そこで今回は、スマホ向け動画コンテンツの制作・発信を、ブームに先立ち一早く手がけてきた皆さんにお集まりいただき、スマホ向け動画コンテンツの現在の潮流と、今後の展望について、面白いお話をたくさん伺いました。
イベントスタート!
こんばんは、スマートニュースの松浦です。今日の登壇者のみなさんをご紹介する前に、まずは少しだけ自己紹介します。僕が制作に関わった動画を、ご紹介しますね。
ご存知の方もいらっしゃるでしょうか。「やわらか戦車」というアニメーションです。僕はかつて、この動画に裏方として関わっていたんですよ。
あれから10年、特にスマートフォンの登場によって、動画を取り巻くシーンは大きく変わりましたね。テレビやパソコンで観る動画と、スマートフォンで観る動画はどう違うのか。今後、スマホ向け動画はどうなっていくのか。今日はそんなお話をゲストのみなさんに聞いてみたいと思います。早速、一人目のゲストを紹介します。スポットライト株式会社の明石岳人さんです。
どうぞ宜しくお願いします。
明石 岳人(あかし がくと) スポットライト株式会社 代表取締役 CEO 1982年静岡県生まれ。上智大学文学部卒。エキサイト株式会社に新卒入社後、2012年にWEBプロデューサーとして独立。雑誌「Pen」のWEB版など多くのデジタルメディアを立ち上げた後、2014年6月に「Spotwright」を創業。スマートフォンに最適化したオリジナル動画コンテンツを自社で企画・製作し、複数のメディアに配信する分散化メディアや、いま注目を集めているVR動画コンテンツに取り組んでいる。
今回は、自己紹介に変えて、ゲストのみなさんの手がけられた代表作、イチオシ作を観てみたいと思います。明石さんの動画は、こちらですね。
※Facebookへのログインが必要です
はい。これは、トヨタの一人乗り電動自動車を取材して作った動画です。日本では結構当たり前に観られる景色を撮ったものですが、この動画、実は、海外の人が珍しがって、たくさん観てくれたんです。オンライン上にあげた動画は、世界中の人が観てくれて、コメントをくれるんですね。10年前、趣味で動画を作ってYouTubeにUPしていた頃、こういった体験が嬉しくて、インターネット動画を本格的に仕事にしようと思ったんです。
ありがとうございます。明石さんは動画広告や、Facebook用の動画を多く手がけていらっしゃる方です。今日はそういう話についても伺えればと思います。
続いてのゲストは、映像ディレクターの太田慧さんです。
よろしくお願いします。
太田 慧 (おおた けい) AOI Pro. 映像ディレクター。1985年大阪生まれ。 武蔵野美術大学映像学科卒業後、葵デジタルクリエーション(AOI Pro.の当時のデジタル系グループ会社)に入社。 現在はAOI Pro.企画演出部に所属。TVCMの企画演出だけではなく、WEBキャンペーンや動画プロモーションも手掛け、活躍の幅を広げている。ADFESTグランプリ、CLIOブロンズ、ロンドン国際広告祭シルバーなど広告賞受賞多数。主な仕事に、NTTぷらら「遅刻しそうな女子高生の最終手段とは・・?」、HONDA フィット「宣言」篇など
太田さんの代表作と言えば、こちらですね。
遅刻しそうな女子高生が、壁をボルダリングでよじ登って教室に入るという動画ですね。多くの方が目にしたことがあるんじゃないでしょうか。これ、広告動画ですよね?どういった経緯で生まれたんでしょう?
僕自身が、ボルダリング好きなんです。それで何かしら壁を登る要素を動画で取り入れたくて、クライアントを説得しました。
太田さんは他にも、フェンシングの選手の女子高生が百人斬りをやるといった動画も手がけていらっしゃいます。面白いお話が伺えそうですね。よろしくお願いします。
さて、続いてのゲストは、AbemaTV 番組プロデューサーの鎮目博道さんです。鎮目さんは、AbemaTVのニュース番組、AbemaPrimeの演出・プロデューサーをなさってるんですが……実はたった今、放送中なんですよね?
そうなんです。なんとかよろしく頼む!と言って、僕はこっちにきちゃいました(笑)。
鎮目 博道 (しずめ ひろみち) 1992年テレビ朝日入社。総務部を経て、社会部記者に。 小宮悦子の「スーパーJチャンネル」立ち上げにディレクターとして参画。 「スーパーモーニング」、「報道ステーション」ディレクター、報道制作班プロデューサー、「スーパーJチャンネル」特集チーフ、「ポータル」プロデューサーなどを担当。 現在は報道局クロスメディアセンターで、サイバーエージェントと共同出資している「AbemaTV」のメインニュース番組「AbemaPrime」の演出・プロデューサー。 デジタルハリウッド大学院デジタルコンテンツ研究科在籍中。
ありがとうございます。では、せっかくなので現在放送中の動画を観てみましょう。
※こちらは放送のアーカイブ動画です
AbemaPrimeはニュース番組ですが、あえて、地上波のテレビ局でやったら絶対怒られることをやるようにしてます。大人の事情をスルーするニュース番組です。
それは色々大変そうですね(笑)。後ほどじっくり伺いたいと思います。よろしくお願いします。さて最後のゲストは、C CHANNEL編集長の、山崎ひとみさんです。
山崎さんには、最近C CHANNELで特に話題になった動画を紹介していただきました。こちらです。
※画像をクリックするとC CHANNELの動画が開きます。
はい。このセーラームーンネイル動画は最近の大ヒットで、世界中で見られました。C CHANNELの中でも特にネイルの動画は人気ですね。
山崎 ひとみ (やまざき ひとみ) 2007年サイバーエージェント入社。Amebaプロデューサーや「アメーバピグ」立ち上げプロデューサー、スマートフォンコミュニティ事業部長などを担当し、2014年女性向けキュレーションメディアby.S編集長。 2015年12月よりC CHANNEL編集長に就任。
若い女性に大人気のC CHANNEL、ネイルの動画も確かによくシェアされていますよね。さて、今日はこちらの4名の方にお話を伺っていきます。
スマホジャックの縦型MVはなぜ流行ったのか?
本題に入る前に、実は1つ、皆さんに聞いてみたいことがあります。先日、”lyrical School”というアイドルグループの、縦型ミュージックビデオがネットで大きな話題になりましたね。
RUN and RUN / lyrical school 【MV for Smartphone】 from RUNandRUN_lyrisch on Vimeo.
今日あのミュージックビデオがまさに今日、カンヌ国際広告祭にてブロンズ賞を受賞したという一報が入りました。あの動画、どこがどう凄くて、あんなにバズったんでしょうか。ぜひ、みなさんの分析を伺えればと思います。明石さんいかがですか?
そうですね……。まずはとにかく、忠実に作り込んだからだと思います。iPhoneのアイコンにしろ、SNSのデザインにしろ、本物そっくりに作ってあった。スマホジャックをやり切ってます。似たようなコンセプトの動画って実は結構あるにはあるんです。でも、作り込みが甘いのであれだけ流行らなかったんです。
同業者として悔しいところですが、僕も、あれはとてもよくできていると思います。実は結構アナログな手法で撮られていて、紙製のボードなどが使われているところも面白い。
私は長年テレビ業界にいますが、テレビ屋ではまずあの発想には至りません。というのもスマホ動画って、テレビよりもラジオに近いと思うんです。深夜にラジオを聴いていると、自分だけに語りかけてくれているような感覚がありますよね。スマホ動画の親しみやすさも、それに似たものがあると思います。
普段から縦動画を作っている者としては、このMVは悔しかったですね。無駄が全然ないんです。良い意味で、視聴者の期待をことごとく裏切りながら、飽きさせない仕掛けがたくさん詰め込まれていて驚きました。
人気となるスマホ動画に見られる共通点とは?
ありがとうございます。ではいよいよ、本題に入りましょう。今日のトークセッションでは、スマホ向け動画というコンテンツを、いろんな角度から切り取ってみたいと思ってます。まず最初にお聞きしたいのは、人気となるスマホ動画に見られる共通点とは何なのか、ということです。ざっくりとした質問ですが、明石さんからお願いします。
トップバッターで何ですが、そもそもスマホ向け動画って何でしょうか?僕は、そのことから考える必要があると思うんです。例えば、Netflixオリジナル動画にはスマホで見てもテレビで見ても面白いものがあります。スマホ向け、という概念自体は2014年頃からでてきたと思いますが、今や一概にこれがスマホ向け動画、と言えなくなってきているような気がしますね。
なるほど。いきなり前提を問われてしまいましたが、確かにそうですね(笑)。
僕は、スマホ向け動画って雑誌のような動画だと思ってます。
というと?
スマホで見られる動画ってほとんど音楽を聴かれないんですよ。
確かに、移動中の電車の中で見るという人も少なくないですしね。
音のない映像で人を大きく感動させるのは難しいんです。だから、良いスマホ向け動画っていうのは、コンビニに置いてある雑誌をめくる程度の感覚で、気軽に視聴できるものだと思いますね。
鎮目さんはいかがですか?
私の場合は、スマホ向けの生放送番組を作っていますので皆さんとは少し違う答えになりますが、何より突っ込みどころがあることが大事だと考えてます。
それ、ちゃうやん! と言いたくなる感覚ですね?
そうですそうです。その方が、どうもSNSなどでの反応がいいんですね。視聴者が観ていて、思わず突っ込みを入れたくなるポイントがずっと絶え間なくある。そんな番組を作るように心掛けています。
確かに、一言添えてシェアしたくなりますからね。人気が出る動画の共通点、山崎さんはどう思われますか?
そうですね、洗練性と、タイムリー性があることだと考えてます。動画に限らず、ウェブにはたくさんの情報が溢れています。その中で誰かに見られるためには、情報として洗練されていなければいけません。
タイムリー性という点はどうでしょう。
ウェブで情報を探す人は、今、そのときに必要な情報が欲しいんです。その瞬間にたくさんの人に必要とされる、タイムリーな情報である必要があります。
なるほど。その点、僕が長年携わってきたウェブニュースもまさにそうですね。有益な情報としての動画、あるいは娯楽としての動画など、動画コンテンツにも当然ながら、目的に応じたそれぞれの最適な形があるんですね。
縦?横?スマホ向け動画コンテンツ作りのコツ
さて、続いての質問です。今日集まってくださっているお客さんはクリエイターが多く、いつか自分も動画コンテンツを作りたいと思っている人もいると思います。そこで、大変失礼ながら、すぐに真似できる、スマホ向け動画コンテンツ作りのコツを、ぜひみなさんに教えていただきたいなと(笑)。
そうですね、早回しのレシピ動画、最近人気ですよね?あれを真似してみるといいんじゃないでしょうか。もしくは、エフェクトを使って突然可愛くなるというのもいいですね。
すごく具体的にありがとうございます(笑)。太田さんはどうですか?
そうですね、残念ながら僕は、すぐに真似できるようなコツってないと思います。あるとすれば、明石さんもおっしゃった早回しのレシピ動画、Tastemade(リンク)のような、動画の従来の撮り方を覆す大発見をすることですね。
そうそう、Tastemadeはすごいですね。
そもそも料理動画って、業界ではシズルカットと呼ばれる、瑞々しいカットが不可欠と言われていたんですね。ところがTastemadeはそれらを一切無視して、料理の様子を俯瞰で写して、しかも早回しするという大胆な撮り方を発明したんです。
なるほど!動画コンテンツ制作のプロから見ても、あの撮り方は画期的だったんですね。では鎮目さん、少し視点を変えて、生放送、報道といった観点からはいかがでしょうか。
良い動画コンテンツを作るためのコツは、とにかくカメラを長回しして、チャンスを狙うことです。そのタイミングでよくカメラを回してたな、偉いぞ! という映像が撮れれば、誰でも人気動画クリエイターになれます。
それは確かに誰にでもできるコツですね!ただしとても難しそうです(笑)。報道の方は大変ですね。
実は、この前渋谷を歩いていたら、おでこにヘアバンドのようなものでスマホを固定して歩いている若い子がいたんです。おそらくずっと撮影しながら歩いていたんだと思いますが、今後はああいった子達がスクープをものにするのかもしれません。
では最後に山崎さん、アマチュアでもいい動画コンテンツを作るコツ、いかがでしょう?
私が思うコツは、すでにあるコンテンツで、動画にしたほうがいいものを探すことですね。
ほう。というと?
スマートフォンでも動画をみれるようになって、ウェブにおける情報の流通のルールが変わってきていると思います。実はC CHANNELでやってることは、過去に女性誌が扱ってきたコンテンツを、動画に作り変えるってことなんです。同じ観点から、縦の動画に合う被写体を探す、というのもコツの一つですね。
確かにそれはありますね。例えば車って横に長いんで、横動画に納めやすいんです。以前、東京モーターショーの動画をスマホ向けに縦で作ったことがあるんですが、すごく悩みました。
縦動画に横長い被写体をおさめようとすると、どうなるんですか?
想像していただけるとわかると思いますが、上下に無駄な余白が生まれてしまうんですね。結局モーターショーの場合は、画面を分割することで何とかしのぎましたね。
面白いですねえ。その点、人間って縦長いですよね?
はい。特に女性の場合、ロングヘアや、ネイルって、どれも縦長なんです。だから、女性って、そもそも縦動画にすごく合っているんです。
せっかく縦動画の話になったので、このままここを掘り下げてみたいと思います。そもそも今って、縦と横に加えて、Facebook動画なんかのスクエア(正方形)もありますよね。
そうなんですよ。僕は仕事柄よくFacebook動画を作りますが、基本的には横で撮って、後から正方形にカットしてる。つまり、はみ出した両脇の部分の絵は捨てているんですよ。様々なフォーマットに合わせなきゃいけないのでほんとに大変ですよ(笑)。
そもそも、今僕たちは16:9の画角が当たり前だと考えてますが、これだってもともとはフォーマットの都合にクリエイターが合わせてきたに過ぎません。
そうそう。私はその前の4:3の時代からテレビの仕事に関わっていたので、16:9になったときには、すごく横長くなったなと感じました。同じように、画面が間延びしたことで、裏方の人間は隙間を埋めたくなったと思うんです。そこで、ひな壇に芸人をずらっと座らせる、今のバラエティ番組のスタイルが生まれたんでしょうね。
なるほど。画角が変わると、被写体にも大きく作用するんですね。
アマチュアの人がスマホで動画を撮るときって、だいたいみんな縦で撮るんですよ。それもあって、縦動画で人を撮ると、被写体との等身大の距離感を演出できます。これを、横向きの動画にしてみると、人の両脇に余白ができます。この余白をどう埋めるかにアーティスト性が出ると思いますね。
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様々な立場で動画に携わる皆さんをお迎えし開催した本イベント。序盤から次々と面白いお話が飛び出しました。次回は、「すぐに真似できるスマートフォン向け動画コンテンツの作り方のコツ」や、「スマホ向け動画コンテンツ時代にスターになる人」についてお話を伺いました。Part2は7月20日(水)公開予定です。お楽しみに!