広告業界が抱える問題とSmartNews Adsの解決策−−Viewability(ビューアビリティ)、Ad Fraud(デジタル広告詐欺)、Ad blocking(アドブロック)をめぐって

iMedia Brand Summit 2015にアタラ取締役COO有園さんが参加され、レポートを書かれています(有園さん、ありがとうございます!)。

アメリカのiMedia Brand Summit 2015に参加して 〜 業界が抱える6つの課題、そして、迫真のガチバトルとは? 〜

そこで語られたのが、米国のデジタルマーケティングにおいて認識しておくべき6つのポイントです。

(1)Viewability
(2)Ad Fraud
(3)Ad blocking
(4)Liquid Consumers
(5)Online Video
(6)Native Advertising

日本においても、これらのテーマが顕在化していくことは間違いなく、広告主、広告代理店、メディアの三者は各々の立場から対策が求められます。

6つのポイントのうち、(1)Viewability(ビューアビリティ)、(2)Ad Fraud(デジタル広告詐欺)、(3)Ad blocking(アドブロック)について解説し、それらに対して、SmartNewsの広告商品であるSmartNews Adsにおいてどんな取り組みをしてきているかをお伝えします。

(1)Viewability(ビューアビリティ)

ユーザーの目に触れず、クリックもされず、コンバージョンもされない広告は意味がありません。「どこかのページに掲載されている」という事実に、お金を支払うということは合理的とは言えません。

そこで注目されるようになったのがViewability(以下ビューアビリティ)の考え方です。このビューアビリティについて考えるとき、二つ踏まえるべき要素があります。

一つめは、表示回数です。スクロールせずに見られる広告が1個、スクロールしないと見られない広告が2個ある場合、スクロールなく離脱した場合にはimpression(以下インプレッション)は3回となります。一方でビューアビリティを考慮したViewable impression(以下ビューアブルインプレッション)では上記の回数を1回と数えます。その上でスクロールを行い、次の広告が表示されれば、1回から2回にビューアブルインプレッションは増えていきます。

このようにユーザーが見られる領域に入った場合に初めて広告の表示回数をカウントするのがビューアブルインプレッションです。

二つめは、広告の表示領域と表示時間です。広告の表示領域にわずかでも表示されればビューアブルインプレッションを1回と数えて良いのでしょうか?

視聴率調査の監視などを行っている非営利団体Media Rating Council(MRC)と 米国のオンライン広告の業界団体IAB(Interactive Advertising Bureau)は、ビューアブルインプレッションを、ディスプレイ広告の場合「広告領域の50%を1秒以上」表示、ビデオ広告の場合「広告領域の50%を2秒以上」表示と定めています。

State of Viewability Transaction 2015

ビューアブルインプレッションは、オンライン広告の雄にも大きな影響を与えています。

Googleは、2014年12月に実施した調査でGoogle Display Networkのディスプレイ広告(デスクトップおよびモバイル)の56%がビューアブルインプレッションになっていないと発表しました。

Facebookは、ビューアブルインプレッションに積極的に取り組んでおり、IAB定義よりも厳しい「広告領域の100%」表示を広告購入オプションとして提供しています。

5 Factors of Display Viewability

New: 100% In-View Impression Buying and Ad Analytics Partnership with Moat

ビューアビリティについて、SmartNewsは2014年12月のリリース時より検討をはじめ、2015年4月より全広告商品において、IAB基準に準拠したビューアブルインプレッションを採用しております。

ビューアビリティは広告主にとって納得感が高く、成長が期待されるスマートフォン広告において、基礎となる指標です。ビューアブルインプレッションの発生から、クリック、そしてコンバージョンという流れにおいて、広告領域が何%表示され、何秒閲覧した場合に、クリック率とコンバージョン率、そしてその後の購入やサービス継続などのアクションにどのような影響があるかという広告効果測定についても、今後発展していくもののと想定されます。

(2)Ad Fraud(デジタル広告詐欺)

広告は、商品の認知度を向上や購入を促す等の目的で利用されます。対象は人間です。では、人間ではなく、不正なプログラム(ボット)が広告を閲覧、クリックされているとしたら、広告主は目的を果たすことができるでしょうか?もしそうなら広告費は全く無駄なものになってしまいます。このボットによる広告閲覧とクリックをAd Fraud(以下デジタル広告詐欺)と呼びます。

2014年12月に全米広告主協会とWhite Opsが36社181キャンペーンを対象にした調査は、実に動画広告の23%、ディスプレイ広告の11%ほどが、不正なボットによるインプレッションであったとしています。非常に高いニーズに裏打ちされ、高い成長が続く動画広告は、同時にボットの標的になりやすいのです。ボットは2015年には全世界で63億ドルの広告費を無駄にしたと見込まれています。

The Bot Baseline: Fraud in Digital Advertising

ネット広告関係者必見「デジタル広告詐欺の実態:ボットの現状」(全57ページ)を日本語で全公開

また先に述べたビューアビリティは、デジタル広告詐欺によって嵩増しされている疑いが出てきました。デジタル広告詐欺用のボットは、ウェブブラウザを不正にスクロールし、広告領域を表示し、ビューアブルインプレッションを不正に発生させるのです。そのため、ブラウザで表示されるウェブサイトのビューアビリティが担保されているとは言えない状況があります。

SmartNewsは、スマートフォンでニュースを読むためのアプリケーションであり、SmartNewsの広告は、同アプリ内にSmartNews独自のアドサーバから配信されています。このためボットが入り込むことは困難といえます。

デジタル広告詐欺は、ボット作成者並びにボットのネットワーク、ボットが不正行為を行うためのウェブサイト(以下幽霊ウェブサイト))が、アドネットワークから在庫を引き出し、表示・クリックを発生させることで生まれます。ボットの分析、ボットプログラムのインストール拒絶、幽霊ウェブサイトのブラックリスト化などの対策が求められます。

(3)Ad blocking(アドブロック)

Ad blocking(以下アドブロック)とは、ウェブブラウザに拡張機能をインストールし、ウェブサイトに表示された広告を表示しない行為のことです。これを行うツールをアドブロッカーといいます。

PageFairとAdobeの調査によると、アドブロッカーは年41%で成長し、2015年の第二四半期で米国のオンライン人口の16%、4,500万の月間アクティブユーザーが利用し、ヨーロッパにおいては7,700万の月間アクティブユーザーが利用しています。世界中で218億ドルの広告がブロックされています。

これまでアドブロックの主役はパソコンの広告で、ブロックされた広告の98%を占めています。現在スマートフォンのウェブブラザに表示された広告の2%しかブロックはされていません。

そんな中Appleは、iOS 9からSafariにアドブロックもできるコンテンツブロック機能を搭載しました。スマートフォンのアドブロックで使われる主なウェブブラウザはFirefoxとChromeで、Firefoxの16%のユーザーがアドブロックをしています。今後iPhoneで影響がどの程度出るかが注目されます。

業界ごとでアドブロックされている率を眺めると、一番がゲームで26.5%がブロック、続いてSNSで19.1%。逆に低いのは政府・法律2.5%、チャリティー4.9%、不動産5.0%となっています。

The cost of ad blocking

アドブロックの問題は、広告がユーザーにとって邪魔なものでしかないという事実が根底にあります。

コンテンツと無関係な広告を表示する、コンテンツのフォーマットを無視して目立つことに特化した広告フォーマットを作成し表示する、コンテンツをクリックしたあとに、モーダルウィンドウやインタースティシャル広告で画面遷移を邪魔する。

これまでのオンライン広告は、「コンテンツの邪魔」「体験の邪魔」という2つの邪魔をして収益を上げてきました。

Googleの広告とコマース部門の統括、シュリダール・ダマスワミ上級副社長もアドブロックの問題に触れ、インタースティシャル広告(文中では「画面全体を覆うような広告」)についての見直しを明言しています。

グーグル、画面覆う広告見直し検討 「アドブロック」対応 業界挙げ新基準/閲覧者の不快感に配慮 (ログインが必要です)

米国でネイティブ広告プラットフォームを提供するSharethroughは、アドブロック対策の1つとして「スマホアプリを強化せよ」と主張しています。理由として、アプリはアドブロックの対象にはならないからとし、ディープリンクを使い、SNSの投稿などからウェブサイトではなくアプリを開いてもらうことでアドブロックを回避するから、としています。

Ad Blocking Is Not An Apocalypse. It’s The Beginning Of Better Advertising.

SmartNewsは、スマートフォンでニュースを読むためのアプリケーションであり、SmartNewsの広告商品は同アプリ内にアドブロック機能を持ちません。このため影響は限定的です。

参考:アドブロックが世界的な流行のきざし。対応を迫られるすべてのパブリッシャーたち

参考:「広告ブロック」はネットサービスの生態系を崩壊させてしまうのか?

これから

これまで見てきましたとおり、スマートニュースは、(1)Viewability(ビューアビリティ)、(2)Ad Fraud(デジタル広告詐欺)、(3)Ad blocking(アドブロック)について明確な対応を行っております。

(4)Liquid Consumersに関しては、利用者が急拡大するスマートフォンアプリ市場においてSmartNewsは「毎日利用するアプリ」の代表例であり、ニュースアプリの分野で国内トップクラスの月間アクティブユーザーを抱えています。

(5)Online Videoならびに(6)Native Advertisingについては、たとえばビデオ広告の自動再生をニュースアプリの中で早期に実現し、それをビューアブルインプレッションで販売し、多くの広告主さまからのご用命を頂いております。ネイティブ広告においても、厳しい掲載基準と多彩な広告フォーマットで広告主さまのニーズにお応えしております。

ネイティブ広告におけるクレジット表記について (スマートニュース 川崎)

JIAAの「ネイティブ広告に関するガイドライン」について

勉強会・イベントなどを通じて積極的な情報提供をしていきます。Viewability(ビューアビリティ)、Ad Fraud(デジタル広告詐欺)、Ad blocking(アドブロック)、そしてネイティブ広告でお悩みのみなさま、ぜひご連絡をよろしくお願いいたします。

川崎 裕一
yuichi.kawasaki@smartnews.com

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